信用倍率 × 株温計 — 過去10年の徹底検証

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はじめに

「信用倍率が 4 倍を超えたら危険」「信用倍率が下がってきた=そろそろ反発」—— こうした経験則は投資本や掲示板でよく目にしますが、実際に過去 10 年で検証された数字はあまり出回っていません。

この記事では、JPX が公表する信用取引残高の週次データ(2002 年から公開)と、 株温計の日本版温度スコアを過去約 10 年分掛け合わせ、「同じ水準だったとき、過去の日経225 はその後どう動いたか」を集計しました。結論から言うと、信用倍率だけを見る投資判断は意外と頼りない一方、温度との併用では読み方が明確に変わる組合せがあります。

信用倍率とは

信用倍率 = 信用買い残 ÷ 信用売り残。信用取引で買い建てしている投資家と売り建てしている投資家のバランスを示す需給指標です。JPX(日本取引所グループ)が毎週水曜日に前週金曜日時点の残高を公表しています。

  • 1 倍付近: 買い方と売り方がほぼ拮抗。信用取引ではどちらかと言うと稀な水準
  • 2〜3 倍: 買い方がやや優勢。日経平均が安値から戻り始めた局面に多い
  • 4〜5 倍: 買い方が明確に優勢。需給的には「上値が重くなりやすい」と言われる
  • 6 倍超: 歴史的にはかなり高水準。売り方の踏み上げ余地より、買い方の投げ売り余地が大きい

ただし 「買い方優勢 = 売られやすい」が常に成り立つわけではないのが、この指標の難しさです。それを裏付けるのが後半の集計結果になります。

株温計(日本版 Fear & Greed)とは

株温計の日本版温度スコアは、日経225 の 125 日移動平均乖離(C1)と USD/JPY の 50 日モメンタム(C5)の等ウェイト平均で算出する 0-100 のスコアです。20 以下が極寒(総悲観)、81 以上が沸騰(総楽観) トップページの温度計で毎日の値を見られます。

信用倍率の歴史的分布と、いまの水準

まず、そもそも「信用倍率◯倍」がどれくらい珍しい数字なのかを、過去 482 週分の分布で見てみます。直近の信用倍率は5.81で、過去分布の下位から 87%の位置にあります(上位 13%)。

区分信用倍率意味
下位 25%2.80売残が比較的多い局面(底練り / 悲観後)
中央値3.90普通の地合い
上位 25%4.80買い方優勢(需給的には重い)
上位 5%6.50歴史的に高水準(過熱懸念)
いま(2026-04-175.81分布の下位 87%(= 5倍〜 バンド)

信用倍率 × 株温計 × 日経225 リターン

縦軸=信用倍率バンド、横軸=株温計の温度帯。セル内は同条件だった過去週の3ヶ月後の日経225 平均リターンと勝率。※ 正=赤 / 負=緑(日本式配色)。サンプル数 10 未満のセルは薄色(参考値)。

信用倍率\温度
極寒
冷え込み
平温
過熱
沸騰
◀ 現在
〜3倍
+19.2%
勝率 100% / n=6
+10.9%
勝率 83% / n=12
+4.8%
勝率 75% / n=44
+0.8%
勝率 63% / n=65
+3.1%
勝率 58% / n=19
3〜4倍
+8.2%
勝率 100% / n=4
+5.0%
勝率 93% / n=14
+2.7%
勝率 46% / n=38
+0.8%
勝率 38% / n=34
+3.1%
勝率 55% / n=22
4〜5倍
+6.3%
勝率 100% / n=4
+6.2%
勝率 73% / n=22
+1.5%
勝率 47% / n=51
+6.1%
勝率 65% / n=23
+4.3%
勝率 61% / n=18
5倍〜▲ 現在
+10.0%
勝率 100% / n=8
+7.5%
勝率 94% / n=16
+0.8%
勝率 52% / n=32
-0.7%
勝率 33% / n=36
+8.0%
勝率 85% / n=14

信用倍率バンド別の3ヶ月後リターン(温度を問わず)

信用倍率だけを見た場合の集計。比率単独では違いが出にくいことが読み取れます。

信用倍率週数平均中央値勝率
〜3倍146+3.9%+3.7%69%
3〜4倍112+2.7%+0.9%53%
4〜5倍118+3.9%+2.5%59%
5倍〜106+3.2%+2.0%62%

温度バンド別の3ヶ月後リターン(対比用)

対比として、株温計だけで見た場合の同じ集計。こちらは温度帯ごとにはっきりと差が出ます。

温度帯週数平均中央値勝率
極寒22+11.5%+9.7%100%
冷え込み64+7.1%+5.5%84%
平温165+2.5%+0.9%55%
過熱158+1.3%+0.8%52%
沸騰73+4.3%+2.4%63%

示唆 — なぜ「併用」が効くのか

集計結果を並べると、同じ「信用倍率 5 倍超」でも、温度帯が異なれば過去の日経225 リターンは大きく変わります。直感的に言えば:

  • 信用倍率は「仕掛けている投資家のポジションの偏り」を示すもので、状態量です
  • 株温計は「相場の熱量そのもの」を示すもので、モメンタム/乖離の加速度に近い
  • 同じ「買い方優勢(高倍率)」でも、熱量が極寒/冷え込み方向に振れていれば「買い方が踏まれて下落する前の最終局面」と「単に下がりすぎて買い方が溜まっている状態」は意味が違う

上のヒートマップで自分の気になるセル(現在の水準や、過去の暴落時近辺)をクリックして、同じ条件下で歴史的にどう推移したかを確認してみてください。参考値(サンプル数が少ないセル)は薄く表示されます。

データと手法

  • 信用倍率: JPX「信用取引現在高 過去推移表」(二市場計・金額ベース)。週次、申込日(金曜日)基準
  • 温度スコア: 株温計の日本版温度(C1+C5 簡易 2 要素版)。日次
  • 日経225 終値: Yahoo Finance の ^N225 日足
  • 集計対象: 信用倍率と温度履歴が両方存在する期間 (2016-10-282026-04-17)、全482
  • 将来リターン: 各週の申込日終値から 30 / 90 / 180 カレンダー日先の ^N225 終値を比較。該当日が取引日でない場合は 7 日以内の直近取引日で補完
  • タイミング注意: JPX は申込日(金曜)の残高を翌週水曜 (T+5) に公表します。読者が実際にシグナルを元に売買できるのは公表日以降のため、上記集計には数営業日の先行情報優位が含まれる可能性があります。1ヶ月以上の horizon では結果に大きく影響しません

※ 本記事は投資助言ではありません。過去のリターンは将来を保証するものではありません。信用取引にはレバレッジ・金利・追証リスクが伴うため、ご自身のリスク許容度に応じてご判断ください。データ出典: 日本取引所グループ (JPX) / Yahoo Finance