🔄 暴落時に強い業種はどれ?— 温度帯×17業種の過去10年検証

📖 結論を先に

  • 「暴落時(極寒)に強いのはディフェンシブ」は、その後のリターンで見ると過去10年では逆。極寒帯の後3ヶ月で最も戻ったのは機械・電機・精密・鉄鋼・非鉄といった景気敏感の製造業で、トップの機械は平均 +14.4%(勝率 96%)。ディフェンシブ3業種(食品・医薬品・電力ガス)の平均 +3.8% に対し、景気敏感3業種は +13.0% と約 9pp の差がついた
  • 沸騰(総楽観)で強いのは資源・金融バリューエネルギー資源・鉄鋼・非鉄・銀行)。一方、情報通信・サービスその他は平均 -1.9%(勝率 35%)と失速しており、温度帯によって強い業種は明確に入れ替わる
  • 全業種平均で見ると極寒後(+7.2%)と沸騰後(+5.2%)が高く、過熱帯(+0.8%)が最も低い「U字カーブ」。中途半端に熱い相場での新規買いが、過去10年では最も分が悪かった

※「ディフェンシブが役に立たない」という意味ではありません。下落局面の途中で値持ちが良いのは依然ディフェンシブの性質です。この検証が示すのは「底値圏から反発する局面では、下がりにくかった業種は戻りも小さい」という対称性です(詳細は解釈セクションで)。

最終更新: (公開: )| データは毎月1日に自動更新

検証の枠組み

「暴落時はディフェンシブ銘柄に逃げろ」「景気敏感株は買い時が難しい」—— 業種(セクター)選びの通説は多いですが、市場心理の状態ごとに検証した日本株のデータはあまり公開されていません。そこでこの記事では、株温計の日本版温度スコア(0-100)を使って過去10年(2016-07-032026-07-03)の全営業日を 5 つの温度帯に分類し、「その温度帯だった日に買っていたら、17 業種それぞれがその後 1・3・6 ヶ月でどう動いたか」を集計しました。

  • 温度帯: 極寒(0-20)/ 冷え込み(21-40)/ 平温(41-60)/ 過熱(61-80)/ 沸騰(81-100)。温度は C1(日経225 vs 125日移動平均)+ C5(ドル円モメンタム)の 2 要素簡易版
  • 業種: 東証 TOPIX-17 シリーズの 17 分類。リターンは連動 ETF(NEXT FUNDS 1617〜1633)の終値を proxy に算出
  • 基データ: 温度帯別 業種ヒートマップと同一(17業種 × 5温度帯 × 1/3/6ヶ月の平均リターン・勝率)。この記事はそのデータを「業種選びの通説の検証」という切り口で読み解くものです

データで見る

期間切替(1ヶ月/3ヶ月/6ヶ月)で、温度帯別の全業種平均・極寒 vs 沸騰の対比・ディフェンシブ vs 景気敏感の比較をご覧いただけます。

① 温度帯別の全業種平均リターン(3ヶ月後)

温度帯該当日数全業種平均平均勝率
極寒111+7.2%83%
冷え込み336+5.0%71%
平温676+2.1%58%
過熱857+0.8%54%
沸騰337+5.2%68%

※ 各温度帯における 17 業種の平均リターンの単純平均(等ウェイト)

② 極寒 vs 沸騰 — 強い業種は入れ替わるか

極寒(該当 111 日 / 3ヶ月後)

強かった TOP5

  1. 1.機械+14.4%勝率96%
  2. 2.電機・精密+12.4%勝率96%
  3. 3.鉄鋼・非鉄+12.1%勝率90%
  4. 4.情報通信・サービスその他+10.0%勝率100%
  5. 5.小売+8.3%勝率88%

弱かった WORST3

  1. 電力・ガス+2.3%勝率54%
  2. 不動産+3.5%勝率66%
  3. 運輸・物流+3.8%勝率78%

沸騰(該当 337 日 / 3ヶ月後)

強かった TOP5

  1. 1.エネルギー資源+13.2%勝率75%
  2. 2.鉄鋼・非鉄+12.8%勝率73%
  3. 3.銀行+10.2%勝率81%
  4. 4.商社・卸売+8.5%勝率82%
  5. 5.金融(除く銀行)+6.5%勝率77%

弱かった WORST3

  1. 情報通信・サービスその他-1.9%勝率35%
  2. 運輸・物流+0.6%勝率52%
  3. 小売+1.4%勝率59%

③ ディフェンシブ vs 景気敏感(3ヶ月後の平均)

温度帯🛡 ディフェンシブ食品・医薬品・電力ガス⚙️ 景気敏感鉄鋼非鉄・機械・電機精密
極寒+3.8%+13.0%+9.1pp
冷え込み+3.7%+6.2%+2.5pp
平温+1.3%+3.1%+1.8pp
過熱-0.3%+1.4%+1.7pp
沸騰+3.8%+6.9%+3.1pp

※ 差 = 景気敏感 − ディフェンシブ。正なら景気敏感グループが優位だった温度帯

どう解釈するか

① 極寒で「守りの業種」の戻りが小さいのは対称性の裏返し

ディフェンシブ業種(食品・医薬品・電力ガス)は値動きのβ(市場感応度)が低く、下落局面の途中では確かに下がりにくい一方、底値圏からの反発局面でも上がりにくい—— この検証が示すのはその対称性です。極寒帯は「すでに大きく下げた後」の状態なので、そこからの前方リターンを測ると、下げのきつかった景気敏感業種(機械・電機・精密・鉄鋼・非鉄)のリバウンドが最も大きく出ます。「暴落のにディフェンシブへ退避する」のと「暴落のにディフェンシブを買う」のはまったく別の行為だ、というのが実務上の示唆です。

② 沸騰で強い資源・金融は「熱い相場の最終ランナー」

沸騰帯の後に強いのはエネルギー資源・鉄鋼非鉄・銀行といった資源・金利敏感のバリュー系でした。過去10年では、相場の過熱が進むとインフレ・金利上昇への期待が資源と金融に回る展開(2021〜2023年の商社・銀行相場など)が多かったことと整合的です。逆に情報通信などのグロース系は沸騰帯の後に失速する傾向が出ています。

③ どの温度帯でも順位が動かない業種もある

電機・精密は沸騰帯を除く 4 つの温度帯でほぼ常に TOP3 圏に入り続けています(過去10年の半導体・AI 相場の強さそのもの。ただし沸騰帯の後だけは 17 業種中 12 位前後に沈み、②のグロース失速パターンに合流します)。逆に運輸・物流はほとんどの温度帯で 15 位以下でした。つまり業種リターンには「温度で入れ替わる部分」と「10年間の構造トレンドで決まっている部分」が混在しており、この表だけで「温度を見れば勝てる」とは言えません。

注意点・バイアス

  • 極寒帯のサンプルは 111 日と少ない。しかも過去10年の極寒は、コロナショック(2020)や令和のブラックマンデー(2024)のようにV字回復した暴落が中心です。リーマン級の長期下落(下げ続けて極寒が何ヶ月も続く相場)が来た場合、「極寒で景気敏感を買えば戻る」がそのまま通用する保証はありません
  • 温度は 2 要素簡易版(C1+C5)。トップページの 5 要素スコアとは計算が異なります
  • 業種リターンは ETF proxy。信託報酬・乖離を含み、東証33業種分類とも異なります
  • 重複サンプル: 温度帯は連続する日で重なるため、各サンプルは独立ではありません(同じ暴落局面を複数日カウントしています)
  • 過去10年は日米ともに強い上昇相場でした。全業種平均がどの温度帯でもプラス寄りなのはこのレジームの産物で、将来のリターンを保証するものではありません

※ 本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言・特定業種や銘柄の売買推奨ではありません。掲載する統計は過去データの集計であり、将来の運用成果を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。データ出典: Yahoo Finance(^N225 / USDJPY=X / TOPIX-17 連動 ETF)、温度スコアは株温計独自計算。