VIX が 30 を超えた日、その後 S&P500 はどう動いたか?— 過去20年の検証

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はじめに

「VIX が 30 を超えたから株を売った方がいい」「VIX がパニック水準だから退避」—— ニュースやSNSでよく見る経験則ですが、過去20年分のデータで検証されることは稀です。

この記事では ^VIX 日足を過去 約 20 年 (5,031 取引日) 集計しました。結論から言うと、VIX が 30 を超えた日 (449 日) の翌 3ヶ月後、 S&P500 は平均 +5.5% / 勝率 72%。つまり「VIX 高騰=むしろ買い場だった」のが過去 20 年のデータが示す事実です。

ただしこれは 「過去そうだった」 という統計であって、未来を保証するものではありません。データをどう読み、どう行動判断の補助にするか — 記事の後半で、日本版株温計とのクロス集計も交えながら解釈します。

VIX(恐怖指数)とは

VIX(CBOE Volatility Index)は、S&P500 オプションの インプライド・ボラティリティから算出される指標。今後 30 日間の市場予想変動率を年率換算した値です。米国では 1993 年から公表されており、いまでは「恐怖指数」として世界中で参照されます。

  • 15 未満: 極めて落ち着いた相場。油断ゾーン
  • 15〜20: 通常レベル
  • 20〜30: 警戒ゾーン。ヘッジ需要が高まる
  • 30 以上: パニック水準。リーマン危機・コロナショック等の大暴落時に一致

ただし 「VIX 30 超え = 売り」ではないのがこの記事の主題。投資家心理を示すセンチメント指標は、しばしば逆張り指標として機能します。

株温計との関係

株温計の米国版温度(0-100)は VIX を基に算出しているため、VIX とほぼ 1:1 の反比例関係(VIX 低 = 温度高 / VIX 高 = 温度低)です。 一方、株温計の日本版温度は独立した指標(日経225 × USD/JPY の需給ベース)なので、VIX と組み合わせたクロス市場ビューが可能になります。 後半のヒートマップはその角度からの分析です。まずは トップページの温度計で現在の日米温度を確認してから読み進めてみてください。

VIX の歴史的分布と、いまの水準

まず、今の VIX 水準が過去どれくらい珍しい数字なのかを、20 年分・5031 取引日の分布で確認します。直近の VIX は18.9で、過去分布の下位から 58%の位置にあります(上位 42%)。

区分VIX意味
下位 25%13.9極めて落ち着いた相場(低ボラ・油断ゾーン)
中央値17.3通常レベル(平均的な緊張感)
上位 25%22.6警戒ゾーン(ヘッジ需要が高まる)
上位 5%35.0歴史的パニック水準(コロナ・リーマン級)
いま(2026-04-2218.9分布の下位 58%(= 15〜20 バンド)

VIX バンド別の S&P500・日経225 リターン(過去20年)

VIX の水準ごとに過去同じだった取引日を集め、3ヶ月後の S&P500 と日経225 の平均リターンと勝率を算出しました。

VIXサンプルS&P500日経225
平均リターン勝率平均リターン勝率
〜151681+1.9%74%+2.0%59%
15〜20▲ 現在1581+1.9%69%+2.1%59%
20〜301320+2.7%71%+1.3%58%
30〜449+5.5%72%+5.1%64%

データ期間: 2006-04-242026-04-22 (n=5031

VIX × 日本版株温計 × 日経225(クロス市場ヒートマップ)

米国の恐怖指数(VIX)と、日本の需給ベース温度(日本版株温計)は独立したセンチメント指標です。 同時水準の組合せで、その後の日経225 がどう動いたかを 2236 取引日分 (2016-10-272026-04-22)集計しました。※ 正=赤 / 負=緑(日本式配色)。サンプル数 20 未満のセルは薄色(参考値)。

VIX \ 日本温度
極寒
冷え込み
平温
過熱
沸騰
◀ 現在
VIX 〜15
+2.2%
勝率 100% / n=1
+9.5%
勝率 83% / n=64
+3.0%
勝率 61% / n=222
-2.0%
勝率 41% / n=318
+0.6%
勝率 44% / n=162
VIX 15〜20▲ 現在
+7.4%
勝率 100% / n=28
+5.4%
勝率 89% / n=141
+1.0%
勝率 48% / n=216
+3.8%
勝率 60% / n=239
+6.3%
勝率 84% / n=120
VIX 20〜30
+8.0%
勝率 100% / n=39
+4.6%
勝率 74% / n=84
+4.9%
勝率 62% / n=182
+4.2%
勝率 61% / n=224
+2.0%
勝率 40% / n=53
VIX 30〜
+18.4%
勝率 100% / n=38
+13.0%
勝率 97% / n=36
+7.3%
勝率 81% / n=34
+2.6%
勝率 68% / n=34
+15.5%
勝率 100% / n=1

示唆 — 逆張り指標としての VIX

集計結果から読み取れるのは、以下の三点です。

  1. VIX が高いほど、翌 1/3/6ヶ月の S&P500 平均リターンと勝率は上がる傾向。特に 30 以上のパニック帯では、3ヶ月後の勝率が 70% 台に達する日が多い
  2. これは「VIX 30 超えの時点では、すでに悲観は織り込み済み/売り圧力が一巡しているケースが多い」ことの経験的な表れ。逆に VIX 15 未満の平穏期は、目立たないがドローダウンに変わる可能性もある油断相場
  3. ただし 「VIX 30 = 絶対買い」ではない。リーマンショックのように VIX がさらに上昇を続ける局面もある。日本版温度と組合せて、センチメントが本当に一巡したかを確認する使い方が実用的

同じ VIX 水準でも、日本版温度が極寒(すでに売り一巡)か平温以上(まだ調整が始まったばかり)かで、その後の動きは変わります。下のクロス市場ヒートマップで、自分が気になるセル(VIX 高 × 極寒 等)を確認してみてください。

データと手法

  • VIX: Yahoo Finance の ^VIX 日足終値
  • S&P500: Yahoo Finance の ^GSPC 日足終値
  • 日経225: Yahoo Finance の ^N225 日足終値
  • 日本版温度: 株温計の日本版スコア(C1 = 日経225 vs 125日MA、C5 = USDJPY 50日モメンタム の等ウェイト平均)
  • 集計対象: Primary は過去 20 年 (2006-04-24 2026-04-22)、n=5031。Joint は日本版温度が計算できる 2016-10-27 以降、n=2236
  • 将来リターン: 各取引日の終値から 30 / 90 / 180 カレンダー日先の同指数終値を比較。該当日が取引日でない場合は 7 日以内の直近取引日で補完

※ 本記事は投資助言ではありません。過去のリターンは将来を保証するものではありません。VIX が高水準でも一時的な反発で終わることや、さらに下落することもあります。投資判断はご自身のリスク許容度に応じて行ってください。データ出典: Yahoo Finance(^VIX / ^GSPC / ^N225)。